W不倫の慰謝料・相殺・終わらせ方|判例と実務で整理
「夫の不倫相手が既婚者だった」「自分の不倫相手の配偶者から内容証明が届いた」――そう気づいた瞬間、頭の中では4つの家庭、最大8人の利害が同時に動き出します。
W不倫(ダブル不倫)は、通常の不倫とは法律論も実務も異なります。
慰謝料が相殺で目減りすることも、二重請求の応酬になることもあります。
創業22年・相談件数30万件超の株式会社MRには、年間でW不倫案件のご相談が一定数寄せられますが、その多くが「相場通りに進まない」案件です。
本記事では、民法770条・724条・752条の条文を起点に、慰謝料相殺の実務、両家の四角関係、調停・訴訟の進め方、そして関係修復という選択肢までを、判例と探偵実務の両軸で整理します。
W不倫とは|通常の不倫と決定的に違う3つの特徴
W不倫(ダブル不倫)とは、不貞行為の当事者である男女が 双方とも既婚者である ケースを指します。一方だけが既婚で相手が独身の不倫とは、法的にも心理的にも、そして実務の進め方も大きく異なります。
既婚者×既婚者という構造
民法上、不貞行為の主体は誰であっても同じ評価を受けます。しかし、当事者の双方に配偶者がいると、慰謝料を請求できる主体も、請求される主体も両家にまたがります。一般的にはAさんの夫が、妻Aと不倫相手Bさん(既婚男性)の双方に慰謝料請求できる一方で、Bさんの妻も、自分の夫Bと不倫相手Aさん(既婚女性)の双方に慰謝料請求が可能です。請求の矢印が四方向に飛び交うのが、W不倫の最大の特徴です。
「四者の利害」が同時に動く
W不倫が複雑なのは、4人の当事者と、その背景にいる子供・両親・職場までを含めた利害が同時に動く点です。1組目の夫婦が離婚を選ぶか修復を選ぶかが、2組目の夫婦の選択に影響します。一方が訴訟を起こせば、他方も連動して動かざるを得ない場面が出てきます。一般的な不倫案件が「線対線」の構図だとすれば、W不倫は「面と面」が衝突する構図です。
株式会社MRに寄せられるW不倫相談の実態
当社の17年間の統計では、浮気調査全体に占めるW不倫案件の割合は決して低くありません。特徴的なのは、ご相談時点ですでに「相手も既婚らしい」と気づいているケースが半数以上あることです。これは、SNSの普及で相手の家族構成が把握しやすくなったためと推測されます。一方で、「自分が訴えられる側になるかもしれない」という不安からご相談に来られる男性も増えており、男女比は男性4:女性6で推移しています。

W不倫の法的位置づけ|民法上の評価
W不倫であっても、法的には「不貞行為」の枠組みで処理されます。ただし、認定要件と立証のハードルは通常の不倫案件と同じです。
民法770条1項1号「不貞行為」
民法770条1項1号は、配偶者に不貞行為があったことを離婚原因として明示しています。条文上の「不貞」とは、配偶者以外の者との 自由意思による性的関係(肉体関係) を指すと解されています。LINEのやりとりや食事、軽いハグだけでは不貞には該当せず、ホテル等での性的関係の存在を示す客観的証拠が必要です。
民法752条 配偶者協力義務
民法752条は、夫婦の同居・協力・扶助義務を定めた条文です。W不倫はこの協力義務にも違反する行為であり、慰謝料請求の根拠となる「不法行為」(民法709条)の評価において、有責性を加重する要素として判断されます。
不貞認定の証拠基準
裁判で不貞行為を認定するためには、客観的かつ継続的な証拠が求められます。一般的にはラブホテル出入りの最低2回以上、シティホテル等の場合は3回以上の写真・動画が必要とされる傾向があります。1回限りの偶発的な接触では「肉体関係があったとまでは言い切れない」と判断されるリスクが高いためです。配偶者のスマホを無断で見ることは違法であり、適切な手順で証拠を収集しましょう。
W不倫の場合、双方の家庭で証拠を取り合うことになるケースもあります。「自分の不倫相手も探偵を雇っているかもしれない」という前提で、早期に法的に有効な形で証拠を確保することが、その後の交渉カードの数を決めます。
W不倫の慰謝料|「相殺」という特殊論点
W不倫の慰謝料は、通常の不倫よりも論点が一段深くなります。「相殺」という、W不倫特有の実務上の調整が入るためです。
慰謝料相場の前提
不倫慰謝料の相場は、婚姻期間・不貞期間・不貞回数・子供の有無・離婚に至ったか否かなどで決まります。一般的に、離婚に至らない場合で50〜100万円、離婚に至った場合で100〜300万円が裁判例の相場とされています。W不倫の場合、この相場をベースに、後述する「双方有責」の事情で減額調整が入る傾向があります。
相殺が成立するロジック
W不倫の場合、Aの妻はBに対して、Bの夫はAに対して、それぞれ慰謝料請求権を持ちます。論理上は4本の請求権が交錯しますが、当事者AとBの間で「双方とも既婚であることを知りながら不貞を続けた」という事情が認定されると、双方の有責性が考慮され、慰謝料額が双方とも減額される可能性があります。実務では、Aの妻からBへの請求と、Bの夫からAへの請求がほぼ同額になり、結果として 当事者AとBの実質負担が相殺に近い形に収束する ケースがあります。
相殺が話題になる裁判例の論理
裁判例では、双方既婚であることを認識した上での継続的な不貞関係について、慰謝料額を当事者の事情に応じて調整する判断が示されてきました。たとえば、双方既婚の認識・婚姻期間の同程度・子供の有無の同等性・関係修復の見込み等が同程度の場合、両家の慰謝料額がほぼ同等となり、結果として当事者間で経済的に拮抗する形に着地することがあります。一般的には、判例集や弁護士の解説資料で個別ケースの判断理由を確認することが推奨されます。
相殺できない/されにくいケース
ただし「W不倫だから自動的に相殺」とはなりません。次のようなケースでは、相殺的な調整が認められにくくなります。
第一に、一方が既婚であることを偽って関係を始めた場合です。たとえばBが独身を装ってAと関係を持っていた場合、AよりBの有責性が著しく重いと判断されます。第二に、不貞関係を主導した側と従属した側で立場が明確に異なる場合です。立場が強い側(職場上司等)が立場が弱い側(部下等)を関係に引き込んだケースでは、主導側の有責性が大きく評価されます。第三に、片方の家庭が離婚に至り、もう片方が修復した場合です。離婚に至った側の損害が大きいため、慰謝料額に明確な差が生じます。

時効は3年(民法724条)
W不倫の慰謝料請求権の時効は、不法行為の事実と加害者を知った時から3年(民法724条)です。W不倫の場合は「相手も既婚だと知った時点」を起算点と考える整理が一般的ですが、争いになる論点でもあります。証拠を確保したまま時効を意識し、早期に弁護士相談を行うことが推奨されます。
子供の有無による慰謝料の変動
慰謝料の評価では「子供がいるかどうか」も重要な要素です。両家ともに未成年の子供がいる場合、家族としての損害が大きく、慰謝料は相場の上限寄りに評価される傾向があります。一方で、両家とも子供がおらず、双方とも修復を選ぶケースでは、慰謝料は相場の下限寄りに調整されることがあります。W不倫の交渉では「両家の家族構成の比較」が、慰謝料額の妥当性を判断する基準として機能します。
W不倫がバレやすい/バレにくい構造
W不倫には、通常の不倫とは異なる「発覚しにくさ」と「発覚した時の波及力」があります。当社の実務観察から、その構造を整理します。
双方に秘匿動機がある
通常の不倫では、独身の不倫相手には「公にしたい」「結婚したい」という動機が生まれることがあり、これが発覚のきっかけになります。一方、W不倫の場合は 双方が「自分の家庭にバレたら困る」 という共通の動機を持つため、関係を秘匿する力が双方向に働きます。LINEのアカウントを別管理にする、ホテルは現金支払い、待ち合わせは互いの自宅から離れたエリア限定、といった慎重な行動が両当事者から取られるため、発覚までの期間が長期化する傾向があります。
一方の家庭で発覚すると他方に波及する
しかし、いったん片方の家庭で発覚すると、もう一方の家庭にも波及しやすいのがW不倫の特徴です。慰謝料請求や内容証明の送付は、不倫相手とその配偶者の双方を視野に入れて行われるため、不倫相手の自宅へ書面が届くことで他方の家庭にも事態が露見します。「気づいた側」がどちらの家庭になるかで、その後の交渉の主導権が大きく変わります。
探偵調査の難所と期間
当社の実務上、W不倫案件は通常の不倫案件よりも調査期間が長くなる傾向があります。一般的な不倫の調査期間は1週間程度ですが、W不倫の場合は当事者双方が警戒している分、安全圏を広く取った行動パターンを設計しているため、決定的瞬間を撮影できるタイミングが限定されるためです。証拠の9割は3日でつかめる、という当社の経験則も、W不倫では1.4倍程度の時間軸で考える必要があります。
「相手も既婚」をどう確証するか
W不倫対応で実務上の最初のハードルとなるのが、「相手の配偶者の存在をどう確証するか」です。LINEの友だち登録名や勤務先呼称だけでは確証になりません。一般的には、相手の住民票(職務上請求が可能な場合)、SNSでの家族写真投稿、固定電話の名義、公的記録などを総合して判断します。W不倫の慰謝料相殺の議論では「双方が既婚を知っていたか」が決定的に重要なため、調査段階から立証を見据えた情報整理が求められます。
W不倫案件で最も多いのは「自分でカマをかけて確認しようとした結果、相手の家庭にも警戒が広まり、両家ぐるみで隠蔽が始まる」というパターンです。問い詰めない、自分で調査しない――この鉄則はW不倫ではより一層重要になります。
W不倫を終わらせる|段階別の進め方
W不倫を清算するには、感情の動きと法的手続きの両方を、段階を踏んで進める必要があります。順序を間違えると、証拠を失い交渉カードを失います。
STEP1 動かない(自滅行動の回避)
最初にやってはいけないことは、配偶者のスマホを無断で見ることです。配偶者のスマホを無断で見ることは違法であり、不正アクセス禁止法違反に問われる可能性があります。GPSの無断装着も2022年改正のストーカー規制法で処罰対象です。SNSへの書き込みは名誉毀損のリスクがあり、相手家庭への直接連絡は脅迫罪に問われる可能性があります。怒りに任せた行動は、すべてご自身の不利益として返ってきます。
STEP2 証拠を法的に有効な形で残す
次に、探偵業法に基づく届出のあるプロに依頼し、客観的かつ継続的な証拠を確保します。W不倫の場合、相手も既婚だと立証できる材料(住民票・SNSの家族構成投稿の確保等)が、その後の慰謝料相殺の議論で重要な意味を持つため、最初から「双方既婚」の立証も視野に入れた調査設計が望ましいです。証拠は撮った後が大切、を念頭に、調査結果は弁護士と共有できる形で整理して保管します。
STEP3 示談・調停・訴訟の選択
証拠が揃った段階で、進め方は大きく3つに分かれます。
第一に 示談 です。最も穏当で、最も短期間で解決する選択肢です。当事者間で慰謝料・接近禁止・誓約事項を文書化し、可能であれば公正証書化します。W不倫の場合、両家の関係性を考慮し、両家同時に示談する形が取られることもあります。
第二に 調停 です。家庭裁判所の調停委員を介して話し合う手続きです。当事者同士の感情的衝突が大きく示談が成立しない場合に選ばれます。
第三に 訴訟 です。慰謝料額・有責性・相殺の可否で大きな争いがある場合の最終手段です。時間と費用がかかるため、当社では原則として示談優先・訴訟は最終手段でのご相談を推奨しています。
STEP4 両家の関係をどう収束させるか
W不倫特有の論点が、両家の今後の関係です。慰謝料請求が両家から両家に飛ぶ構造のため、収束プロセスでは「両家の総額バランスをどこに着地させるか」を見据えた示談設計が求められます。両家とも修復を選ぶ場合は接近禁止条項が中心、片方が離婚・片方が修復の場合は損害差を反映した慰謝料額の調整が中心になります。
弁護士へ相談すべきタイミング
慰謝料請求書や内容証明が届いた時点、相殺や減額の主張を検討する時点、調停・訴訟を視野に入れる時点では、必ず弁護士にご相談ください。本記事は一般的な法的情報の提供であり、個別の法的判断は弁護士の領域です。当社では、調査と並行して提携弁護士のご紹介も行っています。
当事者本人がW不倫を清算したいとき
ここまでは「気づいた側」の視点での進め方でしたが、当事者本人がW不倫を清算したいというご相談も一定数あります。慎重な対応が必要なテーマですので、ポイントだけ整理します。
自分から終わらせる場合の手順
まず関係を終了させる意思を相手に明確に伝え、連絡を断つことから始めます。一気に切ろうとすると相手の反発で配偶者への暴露につながる場合があるため、段階的に距離を取るアプローチが現実的です。お互いの今後について、暴露しない・連絡しない等の合意を文書化することも検討に値します。
配偶者にバレないまま清算は可能か
理論上は可能ですが、相手が暴露する選択を取った場合のリスク管理は別途必要です。当社では「配偶者に知られず終わらせたい」というご相談に対しても、隠し通すことを目的としたアドバイスはせず、関係終了後にご家庭で起こり得るシナリオへの備え方をご説明しています。ご相談者ご本人が、納得して家族と向き合えるかどうかが最終的な判断軸です。
子供への影響を最小化する選択
お子様がいる場合、家庭内の緊張は子供が空気として吸収します。離婚・修復のいずれを選ぶにせよ、感情に任せたその場しのぎの判断は避け、お子様の進級・進学のタイミングと合わせて慎重に検討することが重要です。
修復という選択肢|W不倫後の夫婦再構築
意外に思われるかもしれませんが、W不倫の発覚後でも、夫婦関係の修復を選ばれるご家庭は少なくありません。
8割が修復を選ぶというMRデータ
当社のご相談データでは、不倫が発覚した夫婦のうち、最終的に 8割の方が関係修復を選ばれます。W不倫の場合は、両家とも子供がいるケースが多く、双方の家庭で「離婚しない」という選択が優勢になる傾向があります。慰謝料の精算と接近禁止条項を盛り込んだ示談を経て、夫婦カウンセリングで再構築に進むのが典型的な流れです。
W不倫案件特有の修復難易度
ただし、W不倫の修復は通常の不倫修復よりも難易度が高い側面があります。理由は3つあります。第一に、相手も家庭を持っていたという事実が、配偶者の「裏切られ感」を増幅させること。第二に、相手家庭との関係(接近禁止が守られているか)を継続的に確認する必要があること。第三に、職場・地域コミュニティが共通している場合、物理的に再接触のリスクが残ること。
これらに対しては、示談書での明確な接近禁止条項、定期的な関係性チェック、必要に応じた職場・住居の変更まで含めた対応を、夫婦で合意して進めることが現実的な解決につながります。

浮気をされた苦しみは、された人にしか分かりません。W不倫の修復は確かに難しいですが、それでも8割の方が修復を選ばれるのは、「家族で築いてきたもの」の重みが、怒りより大きいからです。早期発見、早期解決が心の傷を浅くする鍵です。
まとめ|W不倫の論点を整理する
W不倫を整理する論点は、次の4つに集約されます。
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法的構造の理解: 民法770条1項1号・752条・724条を起点に、四者の請求関係を把握する -
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慰謝料相殺の実務: 双方有責の事情で相殺的な調整が入り得るが、有責性の偏りで結論が変わる -
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段階的な進め方: 動かない→証拠を法的に確保→示談・調停・訴訟→両家の関係収束 -
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修復という選択肢: 8割が修復を選ぶというデータを踏まえ、感情に流されずに選ぶ
株式会社MRでは、W不倫に関する無料相談(電話・対面・オンライン)を全国14拠点で受け付けています。創業22年、相談件数30万件超、成功率96.6%、顧客満足度97%の実績で、W不倫案件特有の難所も含めて伴走してまいりました。提携弁護士のご紹介、夫婦カウンセリングまで一貫してサポートします。一人で抱え込まず、まずはお声がけください。
「証拠は撮った後が大切」――この20年間で30万件超のご相談をいただいた中で、私たちが最も大切にしてきた言葉です。W不倫は四者の利害が動く分、一手の選択が後の数年間を左右します。最初の一歩を間違えないことが、ご自身とご家族を守る最大の鍵になります。
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当記事の監修者
- 氏名
- 岡田 真弓
- 経歴
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1968年東京都生まれ
2003年総合探偵社・株式会社MRを設立
2008年MR探偵学校を開校し、学長に就任
2016年一般社団法人日本ライフメンター協会を立ち上げ、代表理事に就任
2017年こころテラス株式会社を設立
- 紹介文
探偵業の現場で培った経験をもとに、「探偵の現場」や「夫を夢中にさせるいい妻の愛されルール」等の書籍を発売。
また、ビジネスリアリティ番組「令和の虎」にも出演し、あらゆるメディアを通じて、調査の実態や夫婦関係の在り方を伝えています。
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