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養育費の支払い能力がない場合|減額と強制執行の全手順

養育費の支払い能力がない場合|減額と強制執行の全手順

「仕事が変わって収入が減ったから、養育費を下げてほしい」――ある日、元配偶者からそんな言葉が届いたとき、「本当に払えないの?」「子どもの生活はどうなるの?」と、不安と憤りが入り混じった複雑な気持ちを抱えてしまうものです。
養育費を受け取れない苦しみは、実際に経験した方にしか分かりません。
感情だけで動けば関係が崩れ、我慢だけで抱え込めば暮らしが先に傷みます。
この記事では、民法880条に基づく減額の枠組み、2020年4月に施行された改正民事執行法による強制執行の3ステップ、そして相手の所在や勤務先、資産が見えなくなったときの現実的な打開策までを、ひとり親の立場で必要となる順番に整理していきます。

この記事でわかること


  • 養育費の「支払い能力がない」と法的に認められる条件と、認められないケースの違い

  • 民法880条の事情変更4要件と、2020年改正民事執行法による強制執行の3ステップ

  • 相手の所在や勤務先、資産が分からないときに、弁護士と探偵をどう組み合わせるか

養育費の「支払い能力」とは?民法が定める扶養義務の基本

結論からお伝えすると、養育費は「支払う側の生活が苦しい」という自己申告だけで、自動的に免除や大幅減額が認められるものではありません。
民法で定められた扶養義務の一種であり、原則として自らの生活を切り詰めてでも、子に対して自分と同水準の生活を保障する義務(生活保持義務)を負うからです。まずは、この基本構造を整理していきましょう。

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民法766条・877条が定める「養育費を払う義務」の範囲

養育費の根拠となる条文は、主に民法766条と877条の2つです。
民法766条は、離婚時に子の監護に要する費用(養育費)を父母が協議で定めると規定しています。民法877条は、直系血族および兄弟姉妹が互いに扶養する義務を負うと定めており、親が子に対して扶養義務を負うことの根拠になっています。
この扶養義務は一般に「生活保持義務」と呼ばれ、自己の生活を切り詰めてでも子に自己と同水準の生活を保障することが求められるものと解されています。この点は、最低限の生活だけ保障すれば足りる「生活扶助義務」とは異なります。
実務上の目安として広く参照されているのが、裁判所が公表している『養育費算定表』(2019年改訂版)です。
算定表は、父母の年収(給与所得者か自営業者か)と、子の人数・年齢(0〜14歳/15歳以上)の組み合わせから、標準的な月額の目安を示しています。個別の特別な事情がない限り、この基準に沿って判断されるため、相手の主張の妥当性を測る客観的かつ強力な法的根拠となります。

日本のひとり親家庭における未払い率約7割の実態

厚生労働省『全国ひとり親世帯等調査』などの公的統計によれば、日本の母子世帯で養育費を現に受け取れているのは全体の約3割にとどまり、約7割の世帯が継続的な支払いを受けられていないという深刻な実態があります。
つまり「払ってもらえない」という苦しみは、決してあなた一人だけの問題ではないということです。
だからこそ、「支払い能力がない」と主張された時点で冷静に枠組みを知ることが、子どもの生活と未来を守る最初の一歩になるのです。

本当に支払い能力がないのか?判定する3つの基準

「収入が減ったから払えない」――この主張をそのまま受け入れてしまうと、後から立て直すのが難しくなることがあります。
一般的に、支払い能力の有無は次の3つの基準を組み合わせて判断されます。相手の言葉を鵜呑みにせず、冷静に当てはめていきましょう。

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基準1:算定表と実際の収入の比較

第一の基準は、裁判所公表の『養育費算定表』(2019年改訂版)による目安額と、相手の現在の収入を照合することです。
給与所得者であれば源泉徴収票、自営業者であれば確定申告書などの所得資料をもとに、子の人数・年齢、双方の年収の組み合わせから目安を確認します。「新しい収入で妥当な額は、おおよそいくらなのか」を、感情ではなく算定表という共通のものさしで確認できるのです。
この第一段階で、相手の申し出が算定表の目安と大きくズレていないか、まずは落ち着いて見比べてみることをおすすめします。

基準2:潜在的稼働能力――「働けるのに働かない」場合の扱い

第二の基準が、つい見落とされがちな「潜在的稼働能力」という考え方です。
これは、健康で就労可能な状態であるにもかかわらず働いていない、または意図的に低収入の仕事を選んでいると評価できるような場合に、実際の収入ではなく「本来得られたはずの収入」を基準に判断されることがあるというものです。
たとえば、正当な理由なく安定した職を離れて収入を大きく下げたような場合、裁判所は、実際の収入ではなく、性別・年齢・学歴別の平均賃金を示す『賃金センサス』などの統計データに基づき、本来得られるはずの推定年収を前提として養育費を算出することがあります。
「仕事を辞めたから払えない」という一言が、必ずしも支払い能力の否定につながらない、という視点をここで押さえておきましょう。

基準3:自己申告と実態のズレを埋める視点

第三の基準は、書類だけでは見えにくい実態を確かめるという視点です。
たとえば、副業や事業所得、不動産や車両の保有状況、転職後の実際の勤務先など、相手が申告していない要素が、支払い能力の判断に影響することがあります。
特に自営業や個人事業主の場合、申告上の所得と実際の生活水準にズレがあるケースも指摘されており、実態把握が論点になりやすい領域です。

💡 岡田真弓のワンポイントアドバイス

養育費のご相談を長くお聞きしてきて、相手の「払えない」の言葉をそのまま信じたまま、何年も受け取れずにいらした方に本当にたくさん出会ってきました。
感情で決めつけるのは禁物ですが、一方的な自己申告だけで子どもの選択肢を狭めてしまうのは、本当にもったいないのです。
まずは算定表、潜在的稼働能力、そして実態という3つの視点で、落ち着いて整理してみてくださいね。決めるのはあくまでもご本人、というのがわたしたちの姿勢です。

支払い能力がない場合に認められる減額・免除のケース(民法880条)

では、本当に支払い能力が下がっているケースでは、どのような場合に減額や免除が認められるのでしょうか。
一般的に、この判断の枠組みを示しているのが民法880条と、実務で定着している「事情変更の4要件」です。

民法880条「事情変更」とは何か

民法880条は、扶養の協議や審判がされたあとに事情に変更が生じた場合、家庭裁判所は扶養の程度や方法についての協議または審判を変更または取り消すことができると定めています。
要するに、一度決めた養育費の額でも、あとから事情が大きく変われば、見直しが認められる余地があるということです。
実務上、事情変更が認められやすいのは、次の4つの要件をすべて満たす場合とされています。


  • 客観的な事情の変更があったこと(収入の大幅な減少・重大な病気・失業など)

  • その事情が、当初取り決めた時点では予見できなかったこと

  • 事情変更について、当事者に重大な落ち度がないこと(身勝手な理由での退職や借金などは不利になりやすい)

  • 変更を認めないと公平性を欠く状況にあること

この4要件は、あくまで実務上の判断枠組みであり、結論はケースごとに異なります。自分のケースで当てはまるかどうかは、個別の事情を踏まえた弁護士への相談が欠かせません。

認められやすいケース/認められにくいケース

一般的に、減額や免除が認められやすいとされるのは、以下のようなケースです。


  • 支払う側が重い病気やけがで長期間就労できなくなった場合

  • 勤務先の倒産やリストラなど、本人に帰責性のない失業の場合

  • 再婚により新たに子が生まれ、扶養家族が増えた場合

  • 受け取る側が再婚し、再婚相手と子が養子縁組をした場合

一方で、一般的に認められにくいとされるケースもあります。


  • 自主的な転職や独立による収入減少

  • 当初から予見できた収入変動(契約期間終了の見込みがあった等)

  • 浪費や遊興による生活費不足

  • 受け取る側が再婚しても、再婚相手と養子縁組をしていない場合

自分のケースがどちらに近いか判断に迷う場合は、早めに弁護士への相談をご検討ください。事情変更の主張は、感情ではなく客観的な資料で組み立てた側が有利に進みやすい領域です。

受け取る側の強制執行3ステップ(2020年民事執行法改正)

「話し合いでは解決しない」「相手に支払い能力はあるはずなのに、まったく払ってくれない」――そんな場合に検討の対象となるのが、強制執行の手続きです。
2020年4月に施行された改正民事執行法によって、以前は壁になりがちだった部分が一部整理され、受け取る側が動きやすい制度になりました。ここでは一般的な流れを、3ステップで整理します。

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ステップ1:債務名義の確認――公正証書の執行認諾文言がカギ

強制執行の前提として必要になるのが「債務名義」です。債務名義とは、強制執行を正当化する公的な書類の総称で、代表的なものとしては次のような種類があります。


  • 執行認諾文言付き公正証書

  • 調停調書、審判書

  • 確定判決、和解調書

とりわけ離婚時の取決めで作成されることが多い公正証書は、「強制執行認諾文言」が含まれているかどうかで、その後の動きやすさが大きく変わります。文言がなければ、あらためて調停や審判で債務名義を取得するところから始めなければなりません。
ご自宅に保管されている書類を、まずは落ち着いて確認してみてください。どこから動くかは、この一枚の書類で決まります。

ステップ2:財産開示手続(民事執行法196条以下)――2020年改正で刑事罰強化

次のステップが、財産開示手続(民事執行法196条以下)です。
これは、債務者本人を地方裁判所(執行裁判所)に呼び出し、自身の財産状況を開示させる手続きです。2020年の改正で、正当な理由なく出頭しない場合や虚偽の陳述をした場合、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金という刑事罰が科されうるようになり、実効性が一段と高まりました。
「相手が本当に財産を持っていないのか」を公的に明らかにする仕組みとして、以前よりも使いやすくなったと言えるでしょう。養育費の回収において、避けて通れないステップです。

ステップ3:第三者からの情報取得手続――金融機関・勤務先情報の開示

さらに2020年改正で新設されたのが、第三者からの情報取得手続です。この制度により、裁判所を通じて次のような情報を取得できるようになりました。


  • 銀行などの金融機関から、相手名義の預貯金口座の情報

  • 市町村や日本年金機構から、相手の勤務先に関する情報

  • 登記所から、相手名義の不動産に関する情報

これらの情報をもとに、給与差押えや預貯金差押えを申し立てることができます。
ただし、勤務先や不動産の情報を取得するためには、原則として事前にステップ2の『財産開示手続』を行っている必要があります。いきなり勤務先を特定できるわけではない点に注意が必要です(預貯金口座の情報取得は、財産開示を経ずに行うことが可能です)。
養育費の場合、給与の差押え可能範囲は民事執行法152条3項に特例が設けられており、一般的な債権と比べて手取りの原則2分の1まで差し押さえることができるとされています。通常の債権の差押え範囲(手取りの原則4分の1)より広く、養育費の確実な回収を目的とした仕組みです。

相手の所在・勤務先・資産が分からないときの打開策

ここまで読んで、「制度としては分かった。でも、そもそも相手がどこに住んでいるのか、どこで働いているのかも分からない」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
強制執行も第三者情報取得も、相手の氏名・住所などの基本情報が出発点になります。そのため、その情報が曖昧だと手続きは前に進みにくいのが実情です。

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所在・資産の実態調査が強制執行の成否を分けるケース

実務上、ひとり親家庭の養育費回収の現場では、以下のような状況がしばしば重なって発生します。


  • 離婚後に元配偶者が転居を繰り返し、現住所が不明

  • 転職を繰り返し、最新の勤務先が把握できていない

  • 「収入がない」と主張しているが、副業や事業収入の実態が見えない

  • 不動産や車両など、資産の保有状況が把握できていない

一般的に、相手の所在や勤務先、資産の手がかりを合法的に得る手段として、探偵業法に基づく所在調査・資産調査を組み合わせるという選択肢があります。
公安委員会への届出を受けた探偵事業者が、公開情報の精査や適法な聞き込み、尾行・張り込みなどの手法を組み合わせ、弁護士手続きの前段で実態を明らかにする、というイメージです。「調査で所在や勤務先が確定してから、弁護士が第三者情報取得や給与差押えを申し立てる」という順番が、結果的に最短ルートになることもあります。

株式会社MRが提供する弁護士連携型のサポート

株式会社MRは、2003年創業の総合探偵社として、新宿本社ほか全国14拠点で活動しています。
成功率96.6%・顧客満足度97%を維持しながら、所在調査・資産調査、そして離婚や養育費問題に伴うカウンセリングまでを一貫してサポートしてきました。
離婚・家事事件の解決実績が豊富な提携法律事務所と連携し、調査で判明した情報をもとに、弁護士による減額調停への対応や強制執行の申立てへとスムーズに橋渡しを行う体制を整えています。
「弁護士でなければできない法的手続き」と「探偵でなければ拾いにくい実態情報」を組み合わせるという、弁護士連携型の発想です。ひとりで全部を抱え込む必要はありません。

💡 岡田真弓のワンポイントアドバイス

養育費のご相談では、「書類の上では払えなくても、実際には副業や別の収入があった」「転職したと言っていた先が、実は家族経営の会社だった」というお話を、本当に数多く伺ってきました。
決して相手を悪者扱いするためではなく、子どもの生活を守るために実態を知る、という発想で、一歩踏み出していただきたいのです。
早期発見、早期解決が、心の傷を浅くする鍵です。ひとりで抱え込まず、弁護士と探偵、両方の力を上手に使っていただければと思います。

よくある質問(FAQ)

Q1. 養育費の時効は何年ですか?

一般的に、毎月支払われる性質の養育費(定期金債権)の各回分については、改正民法のもとで5年の消滅時効が定められているとされています。調停調書や確定判決などで定められた養育費の場合は、10年まで時効期間が延長される扱いです。
ただし時効の起算点や中断・更新事由はケースにより異なるため、詳細は弁護士への相談をおすすめします。

Q2. 元配偶者が生活保護を受給している場合、養育費はどうなりますか?

生活保護を受給しているからといって、養育費の支払い義務そのものがなくなるわけではありません。ただし、実際の支払い能力が著しく低下しているケースでは、減額や一時的な支払猶予が認められる余地があるとされています。
一方で、生活保護から脱却して就労を再開した場合には、再度の協議や調停で増額を求めることも検討できます。

Q3. 令和8年4月施行の家族法制改正で何が変わる予定ですか?

令和8年4月に施行された改正法により、「法定養育費制度」が導入されました。これにより、離婚時に養育費の取り決めをしなかった場合でも、最低限必要な金額を「法定養育費」として請求できるようになっています。
また、養育費債権に「先取特権(さきどりとっけん)」が認められ、公正証書等がなくても不動産などの差し押さえが可能になるなど、回収のハードルが大きく下がりました。

Q4. 自分が再婚した場合、養育費の減額を求められる可能性はありますか?

一般的に、受け取る側が再婚しただけでは、当然には減額されないと解されています。ただし、再婚相手と子が養子縁組をした場合には、再婚相手が第一次的な扶養義務者となり、実親側の養育費が減額または免除される可能性があるとされています。
どこまで認められるかは、双方の収入や家族構成など、総合的な事情によって判断されます。

まとめ:諦める前に、実態を明らかにする一歩を

養育費の「支払い能力がない場合」の対応は、感情で動くほど不利になりやすい領域です。
一方で、冷静に制度を理解し、順番に動けば取り戻せる可能性は十分に残されています。最後に、今回お伝えした内容の要点を振り返っておきましょう。


  • 支払い能力は「算定表」「潜在的稼働能力」「実態調査」という3つの基準で判定される

  • 減額は民法880条の事情変更4要件を満たす場合に限って認められやすい

  • 2020年民事執行法改正で、財産開示と第三者情報取得が使いやすくなり、強制執行の実効性は格段に上がった

  • 所在や資産が見えないときは、弁護士と探偵の役割分担で次の一歩が見えることがある

  • 早期発見、早期解決が、子どもの生活と未来を守る最大の鍵になる

養育費を受け取れない苦しみは、当事者にしか分かりません。
それでも、一歩踏み出すことで状況は必ず動きます。決めるのはあくまでもご本人です。そのために必要な情報と選択肢を、株式会社MRは全力でお届けしたいと考えています。
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当記事の監修者

当記事の監修者:岡田 真弓
氏名
岡田 真弓
経歴

1968年東京都生まれ

2003年総合探偵社・株式会社MRを設立

2008年MR探偵学校を開校し、学長に就任

2016年一般社団法人日本ライフメンター協会を立ち上げ、代表理事に就任

2017年こころテラス株式会社を設立

紹介文

探偵業の現場で培った経験をもとに、「探偵の現場」や「夫を夢中にさせるいい妻の愛されルール」等の書籍を発売。
また、ビジネスリアリティ番組「令和の虎」にも出演し、あらゆるメディアを通じて、調査の実態や夫婦関係の在り方を伝えています。

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