興信所はどこまで調べられる?できること・できないことを探偵業法の条文で解説
興信所が調べられるのは、聞き込み・尾行・張り込みなど探偵業法が認めた方法で分かる「所在・行動・素行」の範囲です。戸籍や信用情報、スマホの中身のように他の法律で禁じられた情報は、どの業者でも調べられません。この記事では、できること・できないことを条文の根拠つきで整理し、相談前に確認すべき点をまとめます。
この記事でわかること
- 興信所が調べられること・調べられないことと、その法的根拠
- 離婚歴・借金・職歴など「過去」がどこまで分かるか
- 違法な依頼を避け、信頼できる興信所を選ぶための相談前チェックリスト
調べたいと思うこと自体は自然なことです。問題になるのは、法律で禁じられた方法を頼んでしまうことです。
まず自分のケースで何が調べられるか知りたい方は、匿名の無料相談からお気軽にお問い合わせください。
【結論】興信所が調べられること・調べられないこと一覧
👉 このパートをまとめると!
調べられるのは所在・行動・素行など。戸籍・信用情報・スマホ内は不可
興信所が調べられる範囲は、意外なほどはっきりしています。法律で認められた方法を使って分かる情報は調べられ、他の法律で取得が禁じられている情報は調べられません。
まずは一覧で確認してみてください。

| 項目 | 調べられるか | 分かる粒度 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 氏名・住所・勤務先 | ○ | 現在の生活拠点と所属 | 探偵業法2条(聞込み・尾行・張込み) |
| 行動・立ち回り先 | ○ | 日時・場所・同行者を記録 | 同上 |
| 異性関係・交友関係 | ○ | 交際の有無と頻度、相手の外形的情報 | 同上 |
| 職歴・学歴の裏取り | ○ | 申告内容と実態の照合 | 聞込み・公開情報 |
| 離婚歴の有無 | △ | 聞込み等からの推定 | 聞込み・公開情報 |
| 借金の兆候 | △ | 生活状況からの推定のみ | 素行調査 |
| SNS等の公開情報 | ○ | 本人が公開している範囲 | 公開情報の収集 |
| 戸籍謄本の取得 | × | — | 戸籍法10条・10条の2 |
| 住民票の写しの取得 | × | — | 住民基本台帳法12条・12条の3 |
| 借入残高・口座・信用情報 | × | — | 信用情報機関の本人開示原則・金融機関の守秘義務 |
| 犯罪歴 | × | — | 個人情報保護法2条3項(要配慮個人情報)・当局の管理情報 |
| スマホの中身・位置情報 | × | — | 不正アクセス禁止法・ストーカー規制法 |
| 盗聴・盗撮 | × | — | 住居侵入罪・電波法・各種条例等 |
| 出身地など差別につながる事項 | × | — | 探偵業法9条(用途が差別等と知ったとき) |
業者によって「調べられる」と言う範囲が異なる場合、判断基準は法律です。
なぜこの線引きになるのか、以下で順に説明します。
興信所と探偵の違い、そして探偵業法とは
👉 このパートをまとめると!
興信所と探偵は法律上同じ「探偵業」。探偵業法は権限を与える法ではなく規制法
興信所も探偵も「探偵業法」で同じルールが適用される
興信所と探偵事務所は、どちらに頼めばいいのか迷う方が少なくありません。
結論から言えば、法律上の区別はありません。どちらも「探偵業の業務の適正化に関する法律」、通称・探偵業法(探偵や興信所の仕事のルールを決めた法律)の対象です。条文に「興信所」という言葉は登場せず、探偵業務を行う営業はすべて「探偵業」として扱われます。
世界大百科事典によれば、興信所は企業や個人の信用調査をする機関で、日本では1892年(明治25年)に外山脩造が大阪で開業した商業興信所が最初とされています。「信用を興す所」という名称が示すとおり、もともとは企業取引の信用調査から始まった呼び名です。現在は探偵事務所とほぼ同じ業務を行っており、呼び方の違いで調べられる範囲が変わることはありません。
探偵業法は、興信所や探偵の仕事を次のように定めています。
この法律において「探偵業務」とは、他人の依頼を受けて、特定人の所在又は行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その調査の結果を当該依頼者に報告する業務をいう。
出典:探偵業の業務の適正化に関する法律(平成18年法律第60号)第2条第1項。e-Gov法令検索 法令ID 418AC0000000060、2026年9月22日確認
つまり、興信所が行うのは「特定の人の所在や行動」についての「聞き込み・尾行・張り込み」による実地調査です。
この定義に含まれないこと、たとえば役所の書類を取り寄せることや、電子機器に侵入することは、そもそも探偵業務ではありません。
探偵業法は「できることを増やす法律」ではない
ここが最も誤解されやすい点です。
探偵業法は、興信所に特別な権限を与える法律ではありません。むしろ、悪質な業者を取り締まり、依頼者と調査対象者の権利を守るための規制法です。
警察庁の解説によれば、探偵業者は探偵業務を行うにあたって、他の法令で禁止や制限をされている行為ができるようになるわけではなく、人の生活の平穏を害するなど個人の権利利益を侵害することがないようにしなければならないとされています(探偵業法6条)。
6条そのものに罰則はなく、行為の原則を示した規定です。違反行為は住居侵入罪など個別の法律で処罰されます。
言い換えると、一般の人がやってはいけないことは、興信所がやっても違法です。聞き込みや尾行が認められているのは、それが誰にでも許される行為の範囲内だからであって、興信所だけの特権ではありません。この前提を押さえておくと、次の「できないこと」の理由がすべてつながります。

興信所はどうやって調べる?認められている4つの調査方法
👉 このパートをまとめると!
聞き込み・尾行・張り込みが法定の3手法。データ調査は公開情報の範囲で
興信所の調査は、特別な装置や裏ルートに頼るものではありません。認められている方法は、次の4つに集約されます。
聞き込み(面接による聞込み)
対象者の周辺にいる人から、対面や電話で話を聞く方法です。近隣、職場、取引先などが対象になります。
ただし、公務員や役所の職員を装って話を聞き出すことは、軽犯罪法1条15号が禁じる官公職の詐称にあたります。実在する企業の社員を装う行為も、相手をだまして情報を得る不法行為となり得るため、業界の自主規範でも認められていません。相手に金銭を渡して情報を得る行為も同様です。
聞き込みで得た情報は、探偵業法10条の秘密保持義務のもとで管理されます。
尾行
徒歩や車両で対象者の後を追い、立ち回り先や同行者を確認する方法です。通常は2名以上の調査員が交代しながら行います。
尾行で許されるのは、公道など誰でも立ち入れる場所での行動確認です。
対象者の敷地に入る、追い回して生活の平穏を害する、といった行為は探偵業法6条の原則に反し、住居侵入罪などで処罰されます。
張り込みと撮影
特定の場所で対象者の出入りを待ち、行動を記録する方法です。証拠として写真や動画を撮ることもあります。
ここで注意したいのは、探偵業法に「撮影を認める」条文はないという点です。
公道など誰でも見られる場所での外形的な撮影が、調査目的との関係で許容される範囲にとどまります。住居の中を撮る、私有地に入って撮る、更衣中を撮るといった行為は、興信所であっても盗撮や住居侵入にあたります。
データ調査(公開情報・名簿)
本人がSNSやブログで公開している情報、出版物、官報など、誰でも閲覧できる情報を集めて整理する方法です。
探偵業法2条が定める探偵業務は「実地の調査」なので、公開情報の収集はそれ自体が探偵業務というより、実地調査に付随して行われる作業です。誰でも閲覧できる範囲にとどまる限り、適法に行えます。
反対に、個人情報を違法に扱う業者から名簿を買い取ることや、通信会社の社員を買収して契約者情報を得ることは、正当な理由の有無にかかわらず認められません。

✍️ 筆者(専門家)の経験からの一言アドバイス
【結論】: 興信所に頼めば「どんな手でも使える」と考えないでください。認められているのは上記4つの方法だけで、それ以外を提案する業者は避けるべきです。
相談窓口で最初に「探偵なら何でもできるんですよね」と言われることは珍しくありません。4つの方法を一つずつ説明すると、多くの方が「では何ができるのか」を冷静に考え直されます。期待のずれは、後悔の入口です。
興信所が調べられないこと5つと、その理由
👉 このパートをまとめると!
戸籍・住民票・信用情報・犯罪歴・スマホ内・差別目的の調査は他法令で禁止され不可
「調べられないこと」を理由とセットで知っておくと、業者の説明が正しいかどうかを自分で判断できます。
戸籍謄本・住民票の取得
戸籍と住民票は、根拠となる法律も請求できる人の範囲も別々に決まっています。
戸籍謄本を請求できるのは、戸籍法10条により本人・配偶者・直系尊属(親や祖父母)・直系卑属(子や孫)です。それ以外の第三者は、戸籍法10条の2により、自分の権利行使や義務履行に必要な場合、国や自治体に提出する場合、その他の正当な理由がある場合に限られます。このほか、弁護士・司法書士・行政書士など8つの士業が、受任した事件に必要な範囲で職務上請求を行えます。
住民票の写しを請求できるのは、住民基本台帳法12条により本人と同一世帯の人です。第三者は同法12条の3により、正当な理由を示して市町村長に申し出て、相当と認められた場合に限られ、士業の職務上請求も同様に受任事件に限定されます。
法務省の説明によれば、他人の戸籍謄本を不正に取得する事件が発生したことから、「誰でも請求できる」という従来の公開原則は改められ、第三者による請求が制限されました。
興信所は、これらのどの請求権者にも該当しません。
興信所が自分の資格で第三者の戸籍や住民票を取ることはできません。「取ってきます」と言う業者は、依頼者に請求権がないのに取得を持ちかけているか、なりすましなどの違法な取得を前提にしているかのどちらかです。そうして得た書類は証拠として使えないだけでなく、依頼者も責任を問われかねません。
借入残高・銀行口座・信用情報
CICなどの指定信用情報機関に登録された借入の内容は、本人が開示請求する制度になっています。加盟している金融機関が照会できるのは、支払能力や返済能力を調査する与信の目的に限られ、興信所はそもそも加盟できません。銀行口座の残高や取引履歴も、金融機関の守秘義務で守られています。
したがって、興信所が「借金がいくらあるか」を正確に調べることはできません。
できるのは、生活ぶりや周囲の話から「借金の兆候があるか」を推定することまでです。この違いは次のセクションで詳しく説明します。
犯罪歴
前科や逮捕歴は検察庁や市区町村が管理する非公開の情報で、民間の業者が照会する手段はありません。個人情報保護法2条3項は「犯罪の経歴」を要配慮個人情報と定め、本人の同意なく取得することを原則として禁じています。
報道や公開された裁判記録の範囲で確認できることはありますが、「犯罪歴を調べます」と断言する業者には注意が必要です。
スマホの中身・位置情報・盗聴
他人のスマホやSNSアカウントに無断でログインすることは、不正アクセス禁止法に反します。
GPS機器を相手の車や持ち物に無断で取り付けたり、その位置情報を取得したりする行為は、令和3年のストーカー規制法改正で規制対象となり、令和3年8月26日から施行されています。警察庁の案内によれば、令和7年12月30日からは紛失防止タグ(スマートタグ)を用いた位置情報の無承諾取得や取り付けも規制対象に加わり、警察が職権で警告できる制度も創設されました。
同法の規制は恋愛感情やその怨恨の感情を満たす目的で行われる場合が対象なので、すべてのGPS利用が直ちに同法違反となるわけではありません。ただし、相手の車への取り付けは器物損壊、私有地への設置は住居侵入などの罪に問われ得ます。
盗聴器についても、設置そのものを直接処罰する法律はないものの、多くの場合、設置時の住居侵入や器物損壊、傍受した内容の利用に関する電波法の規制に触れます。
これらは依頼した側にも法的責任が及ぶおそれのある行為です。興信所に頼むことも、自分で行うこともおすすめしません。
出身地・差別やストーカー目的の調査
探偵業法9条は、次のように定めています。
探偵業者は、当該探偵業務に係る調査の結果が犯罪行為、違法な差別的取扱いその他の違法な行為のために用いられることを知ったときは、当該探偵業務を行ってはならない。
出典:探偵業の業務の適正化に関する法律(平成18年法律第60号)第9条第1項。e-Gov法令検索 法令ID 418AC0000000060、2026年9月22日確認
9条が問題にしているのは、調査項目そのものではなく「調査結果が何に使われるか」です。
出身地や出自を調べて差別に用いること、ストーカー行為に使うこと、DVや虐待から逃れている相手の所在を加害者に知らせることは、いずれも犯罪行為や違法な差別的取扱いに用いられる調査にあたります。相談の段階でこうした目的が分かれば、興信所は依頼を断ります。調査の途中で判明した場合も中止します。
✍️ 筆者(専門家)の経験からの一言アドバイス
【結論】: 「戸籍を取ってほしい」「スマホの中を見てほしい」という依頼は、相談の時点でお断りします。これができると言う業者は、探偵業法6条が他の法律の禁止を解除しないことを無視しています。
この2つを最初に希望される方は、相談全体の中でも一定の割合を占めます。「できません」とお伝えすると落胆されますが、代わりに何ができるかを整理すると、ほとんどの方が適法な調査で目的を達成できています。違法な期待を入口にしないことが、結果的に近道になります。
興信所は「過去」をどこまで調べられる?離婚歴・借金・職歴の可否
👉 このパートをまとめると!
離婚歴の有無・職歴の裏取りは推定可。借入額・犯罪歴・戸籍上の記録は不可
「相手の過去が知りたい」という相談は、結婚前調査でも浮気調査でも非常に多いものです。ただし「過去」と一口に言っても、分かる粒度は項目ごとに大きく違います。以下は一般的な傾向で、実際に判明する範囲は対象者の生活状況や手掛かりの量によって変わります。
| 項目 | 分かることがある範囲 | 分からないこと | 主な手段 |
|---|---|---|---|
| 離婚歴 | 有無、おおよその時期 | 戸籍上の正式な記録、離婚理由の証明 | 聞込み・公開情報 |
| 借金 | 督促の有無、生活水準との不一致などの兆候 | 借入先、残高、返済状況 | 素行調査 |
| 職歴・学歴 | 申告内容の真偽、在籍の事実、前職での評判 | 人事記録の中身 | 聞込み・公開情報 |
| 異性関係・交友 | 現在の交際相手、交友の範囲と頻度 | 過去の恋愛の詳細な履歴 | 尾行・張込み |
| 転居歴 | 過去の居住地の推定 | 住民票の異動記録 | 聞込み・公開情報 |
| 破産・訴訟歴 | 官報や公開された裁判記録の範囲 | 非公開の手続き | 公開情報 |
離婚歴・家族構成
離婚歴の有無や時期は、周囲への聞き込みや本人が過去に公開した情報から推定できることがあります。
ただし、戸籍を取得できない以上、「戸籍上の記録として確認する」ことはできません。子どもの有無や養育費の負担なども、生活状況からの推定にとどまります。
借金・資産(「兆候」は分かるが「金額」は分からない)
上位の解説記事でも見解が分かれやすい項目ですが、線引きは明確です。
借金の「兆候」は分かることがあります。督促状が届いている様子、収入に見合わない支出、消費者金融への出入りなどは、素行調査で確認できる場合があります。
一方で、借金の「金額」は分かりません。借入先や残高は本人しか開示請求できず、興信所が正確な数字を出すことは不可能です。
「借金の総額を出します」という業者の言葉は、信用しないでください。
職歴・学歴・前職での評判
申告された職歴や学歴が事実かどうかは、在籍の確認や周囲への聞き込みで裏取りできることがあります。前職での評判や退職の経緯も、聞き込みの範囲で把握できる場合があります。
企業の人事記録そのものを取得することはできません。
✍️ 筆者(専門家)の経験からの一言アドバイス
【結論】: 「借金があるか」を知りたいときは、「何を判断したいのか」を先に整理してください。目的が決まると、調査の設計と費用がまったく変わります。
以前、「借金を全部調べて」というご相談で目的をうかがったところ、本当に知りたかったのは「結婚しても大丈夫か」でした。そこで素行・職歴・交友の確認に切り替えたところ、必要な判断材料が短期間でそろいました。調べられない金額を追いかけるより、判断に必要な事実を集めるほうが早く、安く済みます。
目的別に何が分かるか(浮気調査・結婚前調査・身辺調査)
👉 このパートをまとめると!
浮気調査は行動と交際の証拠、結婚前調査は経歴・素行の裏取りが中心
同じ4つの方法を使っても、目的によって「何を重点的に調べるか」は変わります。あなたの目的に近いものを確認してみてください。
| 項目 | 浮気調査 | 結婚前調査 | 人探し・所在調査 |
|---|---|---|---|
| 行動・立ち回り先 | ○ | △ | ○ |
| 交際相手の特定 | ○ | △ | — |
| 職歴・学歴の裏取り | — | ○ | — |
| 離婚歴・家族構成 | △ | ○ | △ |
| 借金の兆候 | △ | ○ | — |
| 現住所の特定 | △ | — | ○ |
浮気調査で分かること・証拠になるもの
浮気調査では、対象者の行動を日時・場所・同行者つきで記録し、交際相手との関係を写真や動画で裏づけます。
慰謝料請求や離婚協議で使える証拠にするには、記録の形式と継続性が重要です。
結婚前調査(身辺調査)で分かること
結婚前調査では、申告された経歴の真偽、現在の交友関係、生活状況の確認が中心になります。
人探し・所在調査で分かること
疎遠になった親族や旧友の現住所を、聞き込みと公開情報から特定します。
ただし、DVや虐待から逃れている相手の所在を突き止める依頼は、調査結果が犯罪行為に用いられるおそれがあるため、探偵業法9条に基づいてお断りします。相続人調査や海外での調査は弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。
興信所の調査は違法にならない?個人情報保護法とプライバシーの線引き
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法定の手法で行う調査は適法。ただし私有地侵入や違法取得は権利侵害になる
「興信所に頼むこと自体が違法にならないか」という不安は、相談者の多くが抱えています。関係する法律は2つの層に分けて考えると整理できます。
個人情報保護法と探偵業法の関係
個人情報保護法は、事業者が個人情報を「どう取り扱うか」を定めた法律です。取得した情報の管理、目的外利用の禁止、漏洩の防止などが義務づけられています。
探偵業法は、個人情報を「どんな手段で集めるか」を規制する法律です。
つまり、興信所は探偵業法の範囲で情報を集め、集めた情報を個人情報保護法に従って管理する、という二重の義務を負っています。
この関係は探偵業法自体にも書き込まれています。第8条第1項第3号は、契約前に業者が依頼者へ書面で説明すべき重要事項として、探偵業務を行うにあたっては個人情報の保護に関する法律その他の法令を遵守することを挙げています。依頼者は契約時に、この点の説明を受ける権利があります。
プライバシー権の侵害になる調査とは
法定の手法を使っていても、次のような調査はプライバシー権の侵害として、対象者から損害賠償を請求されるおそれがあります。
1つ目は、住居の中を撮影する、私有地に立ち入るなど、公の場を超えた調査です。
2つ目は、浮気の証拠を依頼したのに家族構成や出自まで調べるといった、依頼の範囲を超えた調査です。
3つ目は、違法に取得した名簿やデータを使う調査です。
民事裁判では証拠の採否は裁判所の個別判断に委ねられており、収集方法が著しく反社会的で人格権を侵害する場合には証拠として採用されないことがあります。加えて、違法な収集に関わった依頼者自身が、不法行為責任を問われる可能性もあります。
「調査する側」であるあなた自身を守るためにも、線引きを知っておくことが大切です。
調査で得た情報はどう守られるか(秘密保持義務)
警察庁の解説によれば、探偵業者の業務に従事する者は業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならず、探偵業者は作成・取得した資料の不正または不当な利用を防止する措置をとらなければならないとされています(探偵業法10条)。
この義務は、調査員が退職した後も続きます。あなたが相談時に話した内容も、この義務で守られます。
相談前チェックリスト:信頼できる興信所を見分ける3つの書面と標識
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重要事項説明書・契約書・誓約書の3枚と、公安委員会届出の標識を確認する
調べられる範囲が分かったら、次は「誰に頼むか」です。信頼できる興信所は、法律で決められた書面と掲示を必ず備えています。
契約前に必ず出てくる3つの書面(探偵業法7・8条)
警察庁の解説では、探偵業者は契約を結ぼうとするときに、依頼者から調査結果を犯罪行為や違法な差別的取扱いなどに用いない旨を示す書面の交付を受け、あらかじめ重要事項を書面で説明し、契約後には契約内容を明らかにする書面を交付しなければならないとされています。
つまり、契約の前後で次の3枚が必ず登場します。
| 書面 | 根拠条文 | 誰が誰に | 内容 |
|---|---|---|---|
| 誓約書 | 7条 | 依頼者→業者 | 調査結果を違法な目的に使わないという誓約 |
| 重要事項説明書 | 8条1項 | 業者→依頼者 | 料金の概算と支払時期、調査方法、秘密保持、法令遵守、解約条件など |
| 契約書 | 8条2項 | 業者→依頼者 | 調査の内容・期間・方法、料金の額と支払方法、解約の定めなど |
この3枚は、面倒な手続きではありません。追加料金や中途解約でもめたとき、依頼者側の証拠になるものです。
書面を省略しようとする業者は、この時点で候補から外してください。
✍️ 筆者(専門家)の経験からの一言アドバイス
【結論】: 契約前に3つの書面が出てこない業者とは契約しないでください。書面はあなたを縛るものではなく、あなたを守るものです。
「他社では口頭の説明だけで着手金を求められた」というご相談を受けることがあります。その後の追加請求や解約で困った方に共通していたのは、手元に書面がなかったことでした。書面の有無は、業者を見分ける最初の、そして最も確実な基準です。
2024年4月以降は「届出証明書」ではなく「標識」で確認する
興信所は、営業所ごとに所轄の警察署を経由して都道府県公安委員会へ届出をする義務があります。届出をしているかどうかの確認方法は、2024年4月に変わりました。
警視庁の案内によれば、令和6年4月1日に探偵業法と施行規則が改正されて届出証明書が廃止され、探偵業者は標識を自ら作成して営業所の見やすい場所に掲示するとともに、ウェブサイトにも掲載することになりました。標識の掲示義務は探偵業法12条2項、様式は施行規則(内閣府令)で定められています。常時使用する従業者が5人以下の場合やウェブサイトを持たない場合は、ウェブ掲載が免除されます。
あわせて、従来「探偵業届出証明書番号」と呼ばれていた8桁の番号は「届出書の受理番号」に名称が変わり、標識にはこの受理番号が記載されます。
古い解説記事には「届出証明書を見せてもらう」と書かれていますが、現在は標識で確認します。
事務所の入口と公式サイトに、受理番号の入った標識があるかを見てください。
行政処分歴の確認方法
探偵業法に違反した業者への指示、営業停止命令、営業廃止命令は、各都道府県公安委員会が定める公表規程に基づき、都道府県警察のウェブサイトで処分日から3年間公表されています。
候補の業者名で検索し、処分歴がないかを確認しておくと安心です。

相談前チェックリスト
- 事務所とウェブサイトに、受理番号入りの標識がある
- 都道府県警察のサイトで行政処分歴がない
- 契約前に重要事項説明書で料金・方法・解約条件の説明がある
- 契約時に契約書が交付される
- 調査結果を違法目的に使わない旨の誓約書を求められる
- 「戸籍も取れる」「スマホの中も見られる」と言わない
- 調査を他社に丸投げしない(探偵業法9条2項で委託は禁止)
- 追加費用が発生する条件が書面に明記されている
- 相談が匿名でできる
- 相談担当者の氏名と経歴が明らかである
- 調査報告書の形式(写真・時系列)を事前に見せてもらえる
✍️ 筆者(専門家)の経験からの一言アドバイス
【結論】: 届出の確認は「証明書を見せてください」ではなく「標識はどこにありますか」と聞いてください。
改正後も、証明書の提示を求められて説明に時間を要する場面が続いています。旧制度の知識のままだと、正しく届け出ている業者を逆に疑ってしまいかねません。最新の確認方法を知ったうえで相談すれば、業者の受け答えからも信頼度が見えてきます。
相談時にお聞きするのは4点だけです。誰について、何を知りたいか、なぜ必要か、今お持ちの情報。この4つが整理できていれば十分です。無料相談はこちら
相談前に準備すること・費用の目安
👉 このパートをまとめると!
目的を決め、手元情報を整理すると調査は短く安くなる。費用は書面で確認
「何のために調べるか」を先に決める
同じ浮気調査でも、慰謝料を請求したいのか、離婚協議の材料にしたいのか、まず事実を知りたいだけなのかで、必要な証拠の形が変わります。
結婚前調査なら、何が分かれば結婚の判断ができるのかを考えておくと、調べる項目を絞れます。
目的が決まっていれば、調査期間も費用も必要最小限にできます。
手元にある情報を整理する
対象者の氏名、勤務先、よく行く場所、行動パターン、写真、車のナンバーなど、今分かっていることをメモにまとめておいてください。
些細に思える情報でも、調査の出発点として役立ちます。情報が多いほど尾行や張り込みの時間が短くなり、費用も抑えられます。
費用の考え方(時間制・パック・成功報酬)と確認すべき条件
料金体系は、調査員1名あたりの時間単価で計算する時間制、一定時間をまとめたパック制、結果に応じて支払う成功報酬制などがあります。
どの体系であっても、確認すべきことは同じです。
1つ目は、基本料金に交通費や機材費が含まれているかです。
2つ目は、調査を延長する場合の条件と単価です。
3つ目は、中途解約したときの精算方法です。
これらは重要事項説明書に記載されるべき項目です。口頭の説明だけで済まされたら、書面での明記を求めてください。
✍️ 筆者(専門家)の経験からの一言アドバイス
【結論】: 「相手にバレないか」より先に、「調査結果を何に使うか」を決めてください。それだけで調査の期間と費用が絞れます。
「とにかく全部調べて」で始まった調査は、費用が膨らんだ末に使われない報告書が残りがちです。目的が決まっていれば、必要のない調査に踏み込まずに済みます。最初の一言で「目的」を伝えていただくのが、依頼者にとって最も経済的な進め方です。
興信所の調査範囲についてよくある質問
👉 このパートをまとめると!
戸籍・スマホは不可、他人でも範囲は同じ、興信所と探偵は法律上同じ
Q. 興信所に頼めば戸籍や住民票を取ってもらえますか?
取れません。戸籍謄本を請求できるのは戸籍法により本人・配偶者・直系の親族と正当な理由のある第三者、受任事件に限った士業に限られ、住民票も住民基本台帳法で同様に制限されています。興信所はいずれの請求権者にも含まれません。「取れる」と言う業者は違法な取得を前提にしており、依頼者も責任を問われるおそれがあります。
Q. 相手のスマホの中身やLINE、位置情報は調べられますか?
調べられません。他人の端末やアカウントへの無断アクセスは不正アクセス禁止法に反し、GPS機器や紛失防止タグを無断で取り付けて位置情報を得る行為はストーカー規制法の規制対象です。興信所に依頼しても、自分で行っても違法になり得ます。行動の確認は尾行と張り込みで行います。
Q. 家族ではない他人のことも調べられますか?
調べられる範囲は、家族でも他人でも同じです。聞き込み・尾行・張り込み・公開情報の範囲で、所在や行動を確認します。ただし、調査結果がストーカー行為や差別に用いられると分かった場合は、探偵業法9条により依頼を受けられません。
Q. 依頼するのに警察の許可や届出は必要ですか?
依頼者に許可や届出は必要ありません。届出の義務があるのは興信所の側で、営業所ごとに都道府県公安委員会へ届け出る必要があります。依頼する前に、業者が届出をしているかを標識で確認してください。
Q. 興信所と探偵事務所はどちらに頼めばいいですか?
法律上の違いはなく、どちらも探偵業法の対象です。調べられる範囲も同じなので、届出・書面・得意分野・料金の透明性で選んでください。興信所という名称は明治時代の信用調査機関に由来する呼び名で、現在は探偵事務所とほぼ同じ業務を行っています。
Q. 自分が興信所に調べられているかもしれません。どうすればいいですか?
法定の手法による調査であれば、それ自体が直ちに違法とは限りません。ただし、私有地への侵入や盗撮、GPSや紛失防止タグの取り付けがあれば、警察や弁護士に相談してください。
まとめ:興信所が調べられるのは「法律で認められた方法で分かる範囲」
👉 このパートをまとめると!
できる範囲は法定手法で分かる所在・行動・素行。書面と標識で業者を確認
興信所がどこまで調べられるかは、業者の腕前ではなく法律で決まっています。
1つ目に、調べられるのは聞き込み・尾行・張り込み・公開情報で分かる所在・行動・素行です。
2つ目に、戸籍・住民票・信用情報・犯罪歴・スマホの中身は他の法律で禁止されており、どの業者でも調べられません。
3つ目に、契約前の3つの書面と標識が出る業者を選び、目的と手元の情報を整理してから相談してください。
ここまで読んだあなたは、もう「何を頼んでいいか分からない」状態ではありません。不安を整理し、適法な範囲で事実を確かめる準備ができています。
あなたのケースで何がどこまで調べられるか、相談室長が無料・匿名でお答えします。相談はこちら
免責事項
本記事は探偵業法等の公開情報に基づく一般的な解説です。個別の適法性判断は弁護士等の専門家にご確認ください。
最終確認日:2026年9月22日|参照法令:探偵業の業務の適正化に関する法律(平成18年法律第60号、e-Gov法令検索 法令ID 418AC0000000060)
参照資料
- 探偵業について - 警察庁 生活安全局
- 探偵業の業務の適正化に関する法律(法令ID 418AC0000000060。第2条・第6条・第7条・第8条・第9条・第10条・第12条) - e-Gov法令検索
- 探偵業の業務の適正化に関する法律施行規則(平成19年内閣府令第19号。標識の様式)
- お知らせ(改正内容)探偵業の業務の適正化に関する法律の改正の要点について - 警視庁
- 探偵業の業務の適正化に関する法律の一部改正について - 神奈川県警察
- 探偵業法に基づく行政処分 - 警視庁
- 戸籍の窓口での『本人確認』が法律上のルールになりました - 法務省
- 戸籍法 第10条・第10条の2 / 住民基本台帳法 第12条・第12条の3 - e-Gov法令検索
- 個人情報の保護に関する法律 第2条第3項 - e-Gov法令検索
- 不正アクセス行為の禁止等に関する法律 - e-Gov法令検索
- ストーカー規制法が改正されました! - 警察庁
- 改正ストーカー規制法が一部施行されます - 長野県警察
- 信用情報の開示 - 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
- 興信所 - 世界大百科事典・日本大百科全書(コトバンク)
当記事の監修者
- 氏名
- 岡田 真弓
- 経歴
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1968年東京都生まれ
2003年総合探偵社・株式会社MRを設立
2008年MR探偵学校を開校し、学長に就任
2016年一般社団法人日本ライフメンター協会を立ち上げ、代表理事に就任
2017年こころテラス株式会社を設立
- 紹介文
探偵業の現場で培った経験をもとに、「探偵の現場」や「夫を夢中にさせるいい妻の愛されルール」等の書籍を発売。
また、ビジネスリアリティ番組「令和の虎」にも出演し、あらゆるメディアを通じて、調査の実態や夫婦関係の在り方を伝えています。
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