離婚未払いの養育費は強制執行で回収できる!差し押さえの流れと必要書類をわかりやすく解説

離婚後の元夫婦間で発生しやすい問題の一つに“養育費の未払い”があります。未払いが発生する要因は様々で、関係性によっては相手の状況を把握することが出来ず、「どのように養育費を払ってもらえばいいのか?」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか?

そこで本記事では、養育費の未払いへの対策方法の一つである“強制執行による回収”について解説します。相手の所在が不明の場合の対処法などについても詳しく取り上げているので、養育費を払ってもらえていない方や、これからそうなる可能性がある方などはぜひ参考にしてみてください。

未払いの養育費は強制執行で回収できる

結論から言うと、特別なケースを除いて、未払いの養育費は強制執行によって回収することができます。特別なケースは「強制執行で養育費を差し押さえられないケース」にて解説していますので参考にしてください。

強制執行とは、債務者の財産を差し押えて債権者に分配することで債権者に債権を回収させる手続きのことです。つまり、この手続きをとることで養育費の未払い分を回収できます。

強制執行を実行するためには“債務名義”というものが必要です。債務名義とは、以下でご紹介する文書のことを指します。

  • 公正証書(養育費の支払いを定めている場合)
    公証人が作成する公文書のことで、養育費について取り決めた内容を記載してあるものです。強制執行に公正証書を使用する場合、「不払いが発生した場合、強制執行をしてもよい」といった内容が記載されている必要があります。

  • 和解調書(養育費の支払いを定めている場合)
    和解が成立した場合に発行される文書。和解調書の中に、養育費の支払いに関する内容が記載されている場合は債務名義としての効力を持ちます。

  • 判決書
    裁判で離婚が決定し、養育費の支払いが決まった場合に発行される文書。確定した判決内容が記載されており、この文書が裁判所から送られて相手の手元に届いた翌日から2週間以内に相手が控訴をしなければ、判決は確定します。

  • 調停調書
    離婚時、調停が成立した際に作成される文書。家庭裁判所で行なわれた話し合いで合意した内容が記載されています。記載されている内容は、確定判決と同じ効果を持つため、そこに養育費に関する内容と強制執行に関する内容が記載されていれば、その効力を発揮します。

  • 審判書
    家庭裁判所が審判で、養育費について決定した際の内容が記載された文書。

養育費の強制執行に必要なもの

実際に養育費の未払いが発生して強制執行をする決断をした場合、手続きに必要なものを知っておく必要があります。必要なものは以下の通りです。

  • 債務名義を作成する
  • 相手の住んでいる場所を特定する
  • 差し押さえる財産を特定する

強制執行を進めるための文書等はもちろんのこと、債務者の居住地や所持する財産について特定する必要があります。この中でも特に場所や財産については、相手の状況が分からなければ入手が難しい情報なので、場合によっては探偵などの専門業者に依頼しなければいけない可能性も考えられます。

債務名義を作成する

未払いの養育費は強制執行で回収できる」でも触れたように、債務名義とは強制執行を行なう際に必要となる公正証書や調停調書のような公文書のことです。つまり、債務名義が無ければ強制執行を行うことは難しくなるため、執行の手続きをするにあたって準備しておく必要があります。

また、債務名義は離婚時の裁判で判決が下った後や、和解が成立した際に発行され、一定期間の経過によって時効消滅します。強制執行を検討しているのであれば、未払いが続いてからどのくらい経過しているのかを確認の上、素早い処理が必要になってくるでしょう。

相手の住んでいる場所を特定する

強制執行を行うには、相手の住んでいる場所を特定する必要があります。なぜなら、強制執行を実行するにあたって必要となる「差押命令」が裁判所から債務者へ送達されないといけないからです。もし債務者に差押命令が送達されなければ強制執行は実現しないので、強制執行を検討している方は事前に相手の住所を把握しておきましょう。

住んでいる場所を特定できない場合の対処方法

もし相手が住んでいる場所が把握できない場合、探偵などの専門業者に依頼するといった方法があります。費用は数十万円かかりますので、利用する際はよく検討する必要があるでしょう。仮に未払い分が数万円しかない場合には、探偵を雇うことによって費用対効果が低くなってしまうので、探偵の利用はおすすめできません。

そのため、相手の住所の特定が難しい場合には、回収を断念することも一つの方法です。国の社会保障制度などを利用して、少しでも生活の足しになるものを活用した方が、相手の住所を探しだすよりかは得策と言えるかもしれません。

差し押さえる財産を特定する

強制執行を実行する際、相手のどの財産を差し押さえるかは、強制執行を依頼する債権者が特定しなくてはいけません。裁判所が独自に相手の財産状況を調査してくれるわけでは無いので気を付けましょう。

また、相手が持っている財産を特定する際、何が財産に当たるのかを事前に知っておくのは非常に重要なことです。財産には、不動産、動産、債権の3つがあり、これら3つの財産を特定することを目的に相手の調査を行なってください。

不動産 土地や建物などのこと。建物を差し押さえる際、住宅ローンが多く残っていてオーバーローンの場合には差し押さえても養育費にあてることができなくなるので注意が必要です。
動産 車や時計など売却するとお金になる不動産以外の財産のこと。
債権 相手が持っている、他人に対して金銭等を請求できる権利のこと。給料などが該当します。

財産を特定できない場合の対処方法

先ほど、裁判所が相手の財産状況を独自に調査してくれるわけでは無いと解説しました。しかし、“財産開示手続き”を取れば、相手の財産を特定することが可能です。

財産開示手続きとは、裁判所を通じて債務者自身に財産を開示させる手続き・制度のことを指します。債務者自身に開示させると説明しましたが、もし開示を拒否したり、嘘の情報を開示したりした場合には、「6か月以上の懲役または50万円以下の罰金」という刑事罰が受けることになります。

つまり、財産開示手続きを行なえば、比較的相手の財産を把握しやすくなると言えるでしょう。

養育費の強制執行の流れ

実際に養育費の未払いに対する強制執行を行う際の流れを解説します。以下がその流れです。

1. 必要書類を準備する
2. 強制執行申立書を作成する
3. 裁判所に強制執行を申し立てる
4. 裁判所が差押命令を発令する
5. 第三債務者から支払ってもらう

債務名義等の準備に始まり、支払いが完了するまでが強制執行の一連の流れとなっています。また、強制執行の申立てから断行日までは、1か月半程度かかると言われています。

必要書類を準備する

強制執行を行う上で必要となる書類は以下の通りです。

  • 債務名義を証明する書類
    未払いの養育費は強制執行で回収できる」でご紹介した、公正証書や和解調書などの書類

  • 確定証明書
    判決が確定していることを証明する書類

  • 送達証明書
    調停証書や和解調書といった書類が、相手先へ送達されていることを証明する書類。裁判所に送達証明申請をすることで発行できます

  • 請求債権目録
    相手へ請求する債権について記載した書類。主に養育費を請求する権利について記載されています

  • 差押債権目録
    差し押さえの対象となる債権について記載してある書類。例えば、給与の差し押さえをする場合には、給与を支払う企業名や給与額が記載されることになります

  • 住民票
    相手先の居住地が、債務名義に記載されているものと異なる場合に必要な書類

  • 資格証明書
    給与などを差し押さえる場合に必要となる書類。相手先の勤務会社や、差し押さえる口座の金融機関の代表者事項証明書が該当します

また、申し立てで必要となる書類については、以下のサイトでダウンロードできます。

強制執行申立書を作成する

強制執行申立書は債権差押命令申立書とも言い、その名の通り強制執行を申し立てるための書類です。書面の内容は以下の通りです。

申立書の原紙は、以下のページでダウンロードできます。Wordのデータもあるので、必要に応じてPC上で打ち込むのもおすすめです。
https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minzi_section21/mousitatesyosiki_saiken/index.html

なお、申立手数料として収入印紙代(基本金額は4,000円)、郵便切手代(裁判所により異なりますが、2,500円前後)がかかりますので、用意しておきましょう。

裁判所に強制執行を申し立てる

必要書類と強制執行申立書の準備が出来たら、裁判所に強制執行を申し立てます。基本的に申し立ては、債務者が居住する場所を管轄とする裁判所に行わなければいけません。

もし、債務者の住所がわからなくて、差し押さえる債権の住所(給与なら企業の所在地、預金口座なら銀行の所在地)が分かる場合は、債権の住所を管轄とする裁判所に申し立てをしてください。

また、申し立ての際は手数料として「収入印紙代」が4,000円、郵便切手代が2,500円程かかりますので用意しておいてください。

裁判所が差押命令を発令する

強制執行を申し立てした後、提出した書類等に不備が無いことが確認されると、裁判所から差押命令が発令されます。差押命令が発令されると、相手の財産・債権は差し押さえられて給与等は相手へ支払われなくなるでしょう。

また、差押命令は相手だけでなく第三債務者、すなわち給与を支払う企業や預金している銀行にも送達されます。

第三債務者から支払ってもらう

差押命令が発令後は、企業から相手への給与振り込みの停止や、銀行口座からの引き落とし制限がかかります。そして、それに伴って債権者である自身は第三債務者(企業、銀行)に対して取立を行なうことが可能です。第三債務者に取立を行なうことで、企業や銀行から差し押さえた金額を支払ってもらえます。

また、債権額が給与だけでは足りない場合は、振込口座を指定しておくことで債権額に達するまで毎月、給与分が振り込んでもらえるケースもあります。とはいえ、差し押さえは基本的に一回きりとなるため、未払い分に対して回収分が不足している場合は再度差し押さえを実行する必要があるでしょう。

強制執行で養育費を差し押さえられないケース

強制執行は相手の財産や債権を差し押さえる手段ではありますが、場合によっては強制執行を申し立てても養育費を差し押さえられないケースもあります。本記事では、差し押さえられないケースを3つ以下でご紹介します。

【強制執行で養育費を差し押さえられないケース】

  • 相手がお金や資産をもっていない
  • 相手の所在が不明になってしまった
  • 給与差し押さえ後に相手が退職した

単純に差し押さえる財産や債権が無い場合は、差し押さえることができません。また、相手の所在がつかめなかったり、差し押さえが完了したものの、その月で企業を退職してしまったりした場合には、差し押さえを実行するのが難しいでしょう。

それぞれの詳細について以下で解説していきます。

相手がお金や資産をもっていない

強制執行を実行しても、相手が財産や債権を持っていない場合には差し押さえをすることができません。そのため、口座に現金が無かったり回収する財産や債権が無かったりする場合は“回収不能”として差し押さえ手続きが終了してしまいます。

ただ、このケースの場合、日雇いのバイトをして現金で持っていたり、別の場所(口座など)に財産を所持していたりする可能性もゼロでは無いため、財産開示手続きなどをして相手の状況を再度調査するというのも一つの方法です。とはいえ、本当に相手が財産や債権を持っていない場合には、財産開示手続きなどの手間もムダになってしまう可能性が高いので、相手の状況が少しでもわかるようなら見切りのタイミングを考えておくことも大切になってくるでしょう。

相手の所在が不明になってしまった

基本的に強制執行は、債務者の所在が把握できていないと実行することができません。仮に相手の住民票を取得していたとしても、強制執行時にそこに住んでいなかったり、所在が不明になっていたりすると結果的に強制執行は行えなくなります。

上記の様に相手の所在が不明で強制執行が実行できなかった場合、通常は裁判所から指定の期間内に相手の居場所を調査して送達場所を申し出るように指示されるのが一般的です。もし、期間内に申し出ることが出来なければ、差押命令は取り消しになってしまうので気を付けなければいけません。

実際、本当に相手の所在を掴むことが難しいのであれば、その労力を社会保障制度の手続きなどに費やした方が良い可能性もあります。自身の状況や手間、費用対効果などを踏まえた上でどうするべきか検討しておくことが大切です。

給与差し押さえ後に相手が退職した

債権の差し押さえ、すなわち給与の差し押さえが実行された後に相手が勤務先を退職した場合、申し立てた差し押さえの効力は消滅してしまいます。ですので、最初の差し押さえで回収分が未払い分に足りなかった場合は、新たな勤務先を調査したうえで、再度強制執行を申し立てる必要があるでしょう。

もし、相手から新たな勤務先や口座について教えて貰えない場合は、「第三者からの情報取得手続」や「財産開示手続」を申し立てて調査することをおすすめします。とはいえ、退職後にすぐ働いているとは言い切れませんので、少し期間を開けてから申し立てた方が良いかもしれません。

まとめ

養育費の未払いが発生して、相手が今後も支払う意思を見せない場合には強制執行の申し立てをすると良いでしょう。相手の財産や債権の状況次第では差し押さえができないケースもありますが、普通に働いて収入を得ているのなら養育費を回収できる可能性が高いです。

ただ、強制執行を申し立てるには“債務名義”や“相手の所在地”など必要なものがあるので、それなりの手間はかかります。ですので、本記事の内容を参考に、未払い分を強制執行によって回収する価値があるのかを判断することが大切になってくるでしょう。

本当に強制執行を申し立てる決断ができた場合は、本記事の「強制執行の流れ」を参考に、必要なものを揃えても追う仕立てをしてみてください。

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