離婚借金を理由に離婚できる?裁判で認められる条件・離婚後の慰謝料や養育費はどうなるのか?

配偶者の借金は、夫婦の生活に大きな負担を与える問題です。借金の返済のために生活費が不足するだけではなく、最悪の場合、家族全員の生活が破綻してしまう事態を招きます。そのため、借金が原因で離婚を考える人も少なくありません。

しかし民法上では、「借金がある」というだけでは離婚の原因として認められていません。借金を理由に離婚を申し立てたとしても、裁判で必ず認められるとは限らないのです。

では、どのような場合に借金を理由に離婚が認められるのでしょうか。また、離婚後の慰謝料や養育費はどうなるのでしょうか。本記事では、借金を理由に離婚できる条件や、離婚後の慰謝料や養育費について解説します。

借金を理由に離婚することは可能

日本では、夫婦は協議(話し合い)により自由に離婚することができます。そのため、借金を理由に離婚したい場合でも、夫婦が合意すれば離婚することは可能です。

ただし、話し合いによる協議離婚が成立しない場合は、調停や裁判を経て離婚を申し立てなければなりません。調停や裁判においても借金を理由に離婚することは可能ですが、裁判で離婚が認められるためには、借金が『婚姻を継続し難い重大な事由』に該当するかと判断される必要があります。

具体的には、以下のいずれかに該当する場合です。

  • 借金の額が大きく、夫婦の生活を著しく困窮させている
  • 配偶者が借金の返済に積極的でなく、夫婦の生活を維持するために必要な収入を得ていない
  • 配偶者が浪費やギャンブルによって借金を重ねている
  • 配偶者が借金の返済のために、夫婦の財産を浪費している

また、離婚を理由に慰謝料を請求することも可能です。ただし、慰謝料を請求するためには、配偶者の借金が婚姻生活の中で生じたものであり、かつ、配偶者が夫婦の扶助義務を放棄するような行為を行ったことが認められる必要があります。

裁判離婚の場合は「重大な事由」の証明が必要

裁判離婚の重大な事由とは、婚姻を継続し難い重大な事由を意味します。民法770条2項では、以下の5つが離婚の原因として認められるとされています。

第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

引用: 民法(明治二十九年法律第八十九号)

このうち、1~4の事由は、具体的な事実を立証することで、裁判官が離婚を認めやすいとされています。一方、5の『その他婚姻を継続し難い重大な事由』は、裁判官の裁量の余地が大きいため、離婚が認められるかどうかは個々の事案ごとに判断されることになります。

つまり、借金を理由に離婚を希望する場合、借金が「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかどうかが問題となるということです。裁判所は、借金の額や内容、配偶者の返済に対する意欲や経済状況など、さまざまな要素を総合的に考慮して判断します。

「総合的に」と表現したのは、借金以外の離婚事由があれば、それも加味した上で判断されるためです。

裁判で離婚が認められる借金以外の事由

『五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。』における、借金以外の離婚の原因となる事由は、具体的には以下のいずれかに該当する場合です。

  • 配偶者によるDVやモラハラ
  • 配偶者による長期間の別居
  • 配偶者の重大な犯罪行為
  • 配偶者の重大な病気や障害
  • 配偶者の宗教や思想の違い
  • 配偶者の養育方針の違い

DVやモラハラなどの事由は離婚の理由としてよく挙げられますが、これらの事由についても、離婚が認められるかどうかは、借金と同じく個々の事案ごとに判断されることになります。

そのため、配偶者が借金をしているだけではなく、同時にDVやモラハラの被害もあるということになれば、すべての事由を総合的に判断して離婚が認められる可能性は高まるでしょう。

このように、民法で定められた『五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。』に、借金や上記その他の原因が該当するかどうかで、最終的に離婚が認められるかが判断されます。借金そのものによる生活の困窮もそうですが、借金+アルファの事由があれば、さらに離婚できる可能性が高まります。

裁判で離婚の事由として認められるためには、上記の事実を示す証拠が必要になります。なかには自分だけでは入手が難しいものもあるため、証拠集めなど、離婚を有利に進める方法として探偵への調査依頼も有力な選択肢になります。離婚を考えているが、証拠集めなどに踏み切れていない人は、MR探偵事務所に一度ご相談ください。

借金を理由に離婚できないケース

借金を理由に離婚できないケースは、以下のとおりです。

  • 借金の額が小さく、夫婦の生活にそれほど影響を与えていない
  • 配偶者が借金の返済に積極的であり、夫婦の生活を維持するために必要な収入を得ている
  • 配偶者が浪費やギャンブルによって借金を重ねていない
  • 配偶者が借金の返済のために、夫婦の財産を浪費していない
  • 借金が配偶者の一方だけの問題ではなく、夫婦の共同責任である

これらの他に、借金が婚姻生活の中で生じたものでない場合も、離婚が認められる可能性は低くなります。

例えば、配偶者が婚姻生活に入る前に借金を抱えていた場合や、婚姻生活の中で生じた借金であっても、配偶者の経済状況が悪化した原因が夫婦の共同責任である場合などは、離婚が認められにくいと考えられます。

借金を理由に離婚しても慰謝料は請求できる?

借金を理由に離婚した場合でも、慰謝料を請求することは可能です。慰謝料とは、離婚に至った配偶者の行為によって、精神的苦痛を受けたことに対する補償です。借金を理由に離婚した場合には、配偶者の借金によって、経済的不安や精神的苦痛を受けたと認められる可能性があります。

ただし、慰謝料を請求するためには、配偶者の借金が婚姻生活の中で生じたものであり、かつ、配偶者の借金によって、婚姻関係が著しく破壊されたことが認められる必要があります。また、借金が配偶者の一方だけの問題ではなく夫婦の共同責任である場合でも、慰謝料を請求できる可能性があります。慰謝料の金額は、配偶者の責任の割合に応じて減額されるケースが多いです。

ちなみに慰謝料の相場は100万円~300万円程度とされています。個々の事案によって慰謝料の金額は大きく異なるため、あくまでも目安として考えておきましょう。

慰謝料請求が難しくなるケース

借金を理由に離婚した場合でも慰謝料請求は可能ですが、請求することと、実際に支払われることは別の話になります。仮に配偶者が慰謝料の支払いを拒否した場合、慰謝料を請求しても回収が困難になる可能性があることに注意しましょう。

そのため、少しでも慰謝料を支払ってもらうために公正証書を作成したり、財産分与における分配を多く設定するなど、慰謝料請求以外の対策も慎重に検討する必要があります。

借金を理由に離婚しても養育費はもらえる?

借金を理由に離婚しても、養育費はもらえます。養育費とは、親子関係に基づいて、親が子の監護や養育に必要な費用を支払う義務です。離婚によって親権を失った親でも、養育費の支払い義務を負います。

ただし、養育費の金額は、親権者の収入や養育費を受け取る子の必要額などを考慮して裁判所が決定します。配偶者の借金によって収入が減少している場合や、養育費を支払う余裕がない場合は、養育費の金額が減額される可能性があります。

なお、養育費の相場は、子供1人あたり月に4万円~10万円程度とされています。ただし、上記に加えて子供の年齢によっても養育費の金額は大きく異なるため、あくまでも目安として考えておきましょう。

離婚後に借金の返済義務が発生するケース

原則として、自身に離婚後に元配偶者の借金の返済義務は発生しません。ただし、例外として以下のケースでは返済義務が発生する可能性があります。

  • 借金の理由が「生活のため」
  • 借金の保証人になっている
  • 住宅ローンの名義人になっている

夫婦生活を破綻させるほどの借金額や原因によって離婚した場合は、おおよそ該当することがないケースではありますが、「保証人になってしまっていた」など思いがけない形で返済義務を負ってしまうこともあります。

借金の理由が「生活のため」

「生活のための借金」とは、生活費や教育費、医療費など日常生活に必要な費用を賄うために借りたお金のことです。具体的には、以下のようなものが挙げられます。

  • 家賃や光熱費、食費などの生活費
  • 学費や塾代、習い事代などの教育費
  • 治療費や入院費などの医療費
  • 冠婚葬祭費用
  • 車や家などの購入費用

民法761条では、「夫婦は、日常の家事に関する費用について、その収入の割合に応じて、連帯して負担する」と規定されています。

この規定により、夫婦は、日常生活に必要な費用を共同で負担する義務を負います。そのため、生活のための借金も、夫婦の共同責任として両方が返済する義務を負うことになります。

ただし、借金の目的が「日常生活の維持」ではなく、「配偶者の浪費やギャンブル」など、夫婦の共同責任ではない場合には、当然ですが借金の返済義務は借金をした配偶者にのみ生じます。

借金の保証人になっている

借金の保証人とは、主債務者(借金を借りる人)が借金を返済できなくなった場合に、主債務者に代わって借金を返済する義務を負う人です。

借金の保証人になると、保証契約に基づいて、主債務者が借金を返済できなくなった場合に主債務者に代わって借金を返済する義務を負います。そのため、元配偶者が保証人になっている借金がある場合、元配偶者が借金を返済できなくなった場合、離婚後も、保証人であるあなたに返済義務が生じる可能性があります。

保証人になった借金は、離婚後も保証契約に基づいて保証人の責任が継続します。そのため、離婚したからといって、保証人としての責任がなくなるわけではありません。

保証契約を解除するには、貸金業者の同意が必要です。また、元配偶者に借金を返済してもらうためには、元配偶者の協力が必要です。そのため、保証人になる際には慎重に検討することが重要です。

住宅ローンの名義人になっている

住宅ローンの名義人だと、元配偶者の借金の返済義務が生じることがあります。これは、住宅ローンには連帯債務という制度があるためです。

連帯債務とは、複数の人が債権者に対して債務を連帯して負う契約です。住宅ローンでは、一般的に夫婦が連帯債務者となるケースが多いです。連帯債務の場合、債権者は債務者のうちの1人に対して返済請求を行った場合、他の債務者に対しても同じ額の返済請求を行うことができます。

そのため、住宅ローンの名義人が離婚した場合でも、元配偶者が住宅ローンの返済を怠った場合、元配偶者に代わって名義人が住宅ローンを返済する義務を負う可能性があります。

離婚後に借金が子供へ相続されるリスク

離婚後に、借金を抱えた元配偶者が死亡した場合は相続人である子供に財産が相続されますが、相続されるのはプラスの財産だけではなく、借金といったマイナスの財産も含まれます。

子供が元配偶者の借金を相続しないためには、相続放棄を行う必要があります。相続放棄は、相続開始を知ってから3ヶ月以内に、家庭裁判所に申し立てることで行うことができます。

相続放棄を行うと、子供は元配偶者の遺産を一切相続しないことになります。ただし、相続放棄をした場合、相続財産から得られる利益も破棄することになります。どちらがよいのかは借金の額によるため、資産とのバランスで最適な判断を下す必要があります。

旦那の借金を理由に離婚すべきか

配偶者の借金を理由に離婚すべきかどうかは、自身の判断に委ねられる問題です。離婚を決断する際には、今だけではなく将来まで見据えて、以下の点を具体的にすることが重要です。

  • 配偶者の借金の金額や返済状況
  • 配偶者の借金によってあなたや子供にどのような影響があるか
  • 離婚後の生活をどのようにしていくか

配偶者の借金の金額が大きく返済計画が立たない場合、長きにわたって、自身や子供の生活が圧迫される可能性が高いため離婚を検討する必要があるでしょう。

離婚した場合、住宅や財産の分割、養育費や慰謝料の支払いなどさまざまな問題が発生します。これらの問題をどのように解決していくかについても事前に考えておく必要があります。

借金に悩まされる現状を打破するために離婚したとしても、離婚後の生活が困窮してしまっては問題が解決したとは言い難いです。そのため、経済的な面はもちろん、子供への影響なども含めて、離婚後の生活をどのようにしていくかをじっくりと考えてみましょう。

まとめ

金額にもよりますが、離婚を考えるほどの借金は家族の生活を脅かします。ただし、重要なことは配偶者に「これから返済していく意思があるか」や「二度と借金をしない意思があるか」といった、借金そのものに対する考え方です。

多額の借金をしていたり、ギャンブルなどで借金を増やしている配偶者を信頼するのは難しいものです。だからこそ、離婚して家族の安全を守ろうとするのは当然の判断です。

しかし、お伝えしたとおり借金を理由に離婚できる場合とできない場合があり、慰謝料や養育費も請求はできても実際に支払われないといったケースも珍しくありません。厳密には、離婚をすること自体が目的ではないはずなので、まずは自身が幸せになれる選択はどれなのかを熟考してみてください。

関連記事

浮気調査・不倫調査動画

MR探偵事務所ではみなさまに探偵をより身近に感じていただき、探偵調査のことを知って頂くために[YouTube]チャンネルを開設して浮気調査・不倫調査の調査動画も配信しております。万が一お困りの時になったら探偵という選択肢を知って頂ければと思います。

【浮気調査】二人の男と不倫?探偵の尾行映像を特別公開!第一弾

【浮気調査】不倫旅行を追跡!! 名探偵の調査映像特別公開!第二弾

【浮気調査】同級生で不倫!?[探偵の調査映像を特別公開!第三弾

田村 淳
24時間 365日 相談・見積もり無料!
まずはお気軽にご相談ください。